理系の人は皆知ってる。ジンクピリチオン効果とは?物事を適切に判断するために。

2018年5月5日

Canteenです。

理系学部の大学に真面目に通ったことのある方であれば、おそらく一度は出会ったことのあるであろう『ジンクピリチオン効果』という言葉。

このジンクピリチオン効果の概念を知っているか知らないかで、物事を適切に判断できるかどうかに大きく影響しますので、簡単にご紹介していきます。

クレンジング用の泡を持つ女性の手
クレンジング用の泡を持つ女性の手

ジンクピリチオンとは

名前からしてすごそうですが、ジンクピリチオンとはあの有名なシャンプーの『メリット』に配合されていた成分です。私は記憶に無いですが、『ジンクピリチオン配合』と謳って宣伝活動を行い、大ヒットとなったそうです。

しかし、皆さんジンクピリチオンが何かご存知でしょうか

これは、未だに似たようなことが繰り返されていますが、ジンクピリチオン自体がわかっていなくてもなんとなく名前の響きからすごそうだ、という印象を使ってマーケティングを行った事例です。

結局、ジンクピリチオン自体に何の効果があるとかそういうことは伝えずとも、何となくすごそうと思わせてしまえば、人々の購買欲を掻き立てたり、注目を集めたりできるということですね。

実際には大した効果がないので、なになにに効果アリみたいな具体的なことを、適切なエビデンスレベルのない状態で根拠なくいうと騙していることになりまして、消費者庁のようなところから指導が入ります。

ただ、含有してますよ、というのは嘘ではないので問題なしってことですね。

ジンクピリチオン効果を用いたその他の事例

ジンクピリチオン効果とは、要は受け手によくわからんけど、なんかすごそうと思わせてしまうという心理学的な効果を狙った手法です。

例えば、よく研究成果を論文にまとめる際にこの手法が用いられます。重大な発見をしたかのように読み手に思わせるように新しい単語を作り出して、その単語を繰り返し記述しキーワード化していきます。読み手は大した発見ではなくとも、『ジンクピリチオン効果』みたいなかっこいい名前がついてたら、なんとなくすごい発見をしたんじゃないかと思わされてしまいます。

最近で言えば、水素水やコラーゲンブームなんかは似たようなもんじゃないでしょうか。水素水と普通の水道水に入っている水素の量の差はなんてたかが知れていますし、微量の水素を体内に取り込んだところで、何らかの効果が得られるとは到底考えられません。そもそも、水素が消化管から吸収されるのでしょうか。

また、コラーゲンは肌の構成に重要な成分であることは間違いありませんが、口から摂取しても体内に取り込まれる際には、体内の胃や小腸といった消化器を通過する際に酵素で分解されるため、コラーゲンの分子構造を保ったまま体内に取り込まれることはまずありません。また、肌の構成に必要なコラーゲンは大部分が経口摂取したものではなく、体内で自動的に生成されたコラーゲンであるはずです。

ジンクピリチオン効果に騙されないために

このように中身を伴わないことが多い、ジンクピリチオン効果を用いた宣伝や発信者に惑わされないようにするにはどうしたらよいのでしょうか。

やはり自分が知らない分野のことであれば、詳しい人に聞くなりネットで調べるなりしてみると良いと思います。体にいいとかなんとかという食品やらなにやらがあちこちで喧伝されていますが、バイオ系の学部の大学に通ってそっち方面の知識のバックグラウンドがないとなかなか判断が難しいと思います。

逆に言うとそういう知識がある人からすると、何言ってんだこいつみたいな風に皆思ってます。

ジンクピリチオンに効果はないのか

繰り返しになりますが、最近の水素水ブームなんかはジンクピリチオン効果と似たようなもんです。水素水って響きがなんだかすごそうですよね。ただ、水に溶ける水素の量なんてごくごくわずかで、人体に何らかの影響を与えるなんて到底思えません。

ただ、科学の世界では効果が『ない』ということを証明することは非常に難しいです。

なぜかというと、効果が『ある』ということは例えば、医薬品であれば患者さんを対象とした臨床試験でポジティブコントロール(効果があるとすでにわかっているもの)の既存薬、ネガティブコントロール(効果がないとわかっているもの)のプラセボ薬(有効成分を含んでいないもの)、効果があるか検証したい新しい医薬品の3つを患者さんにどれを投薬されたかわからないようにして(ダブルダミー法)投薬すれば、効果を証明できます。この場合では、ネガティブコントロールが効果なし、ポジティブコントロールが効果あり、新しい医薬品が効果ありという結果が出れば、試験が適切に行われていてかつ、新しい医薬品に効果があることを証明できます。

しかし、逆にこの薬に効果が『ない』ということを証明することは困難です。例えば、飲む時間変えたら効果があるかもしれないとか、高齢者を対象にしたら効果があるかもしれないとか、無数の場合分けがありますので、それぞれの条件に対して、検証試験を行うことは物理的に難しいです。あらゆる条件下で、効果が『ない』と示すことはほぼ不可能です。

さらに、プラセボ効果というものがあります。病は気からとよくいいますが、全く効果がないものでも、例えば自分が信頼を置いているお医者さんから効果がありますよといって服用していると、実際に効果が出てきます。プラセボ効果は侮れないくらい大きな効果を生み出します。思い込みの効果はすごいです

なので、水素水の効果を心から信じている人にはおそらく何らかのプラセボ効果が得られているはずですので、もちろん水素水のおかげではありませんが、効果はあるように感じる人も中には必ずいらっしゃるはずです。

まとめ

以上、ジンクピリチオン効果のご紹介でした。情報と知識に圧倒的な格差がある状態で、何かを知っている人が知らない人に、悪意を持って何か伝えようとすると良からぬことが起こります。そうした被害を避けるためには、いろいろなことに興味を持って、日頃から情報収集に努めるとともに色んな分野について信頼できる相談相手を持つことが良いと思います。

皆様がジンクピリチオン効果に影響されずに、物事を判断するための一助になれば幸いです。

2018年5月5日

Posted by Canteen