【平成31年3月31日まで】教育資金の贈与税非課税がそろそろ終わる件。
Canteenです。
教育資金の一括贈与を非課税とできる特別法の期限である2019年3月31日が迫っています。記事執筆時点で2018年7月末ですので、残すところ8ヵ月間しかありません。
この制度は数年前からありましたが、私自身子供が産まれるまで全然知りませんでした。
相続税対策にもなるとってもお得な制度みたいです。今さらながら制度について調べてみたので、Canteen調べの結果をレポートしていきます。状況によっては利用しないと税金の面で損してしまう場合があります。
- どういう制度なのか
- 活用すべきなのか
- 具体的な申込み方法
について、簡単にまとめてみましたのでご覧ください。
また、似たような非課税制度に結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度というのがあります。
- 結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度との違い
についてもご説明していきます。
教育資金一括贈与の非課税制度とは?
正式名称では『直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税』といいます。
祖父母または父母等から子や孫へ教育資金を一括贈与する場合、贈与税や相続税といった税金が非課税になりますよ、という制度です。
教育資金一括贈与の非課税制度の概要はこちらの国税庁ホームページからご確認いただけます。
簡単にまとめますと
- 1,500万円まで非課税
- 使用用途は教育資金のみ(金融機関による領収書チェックあり)
- 相続を受けた子または孫、ひ孫が30歳になった時点で余ってたら贈与税が課税
- 贈与者が死亡しても相続税は非課税
といった制度です。
贈与者が死亡しても相続税は非課税というのがポイントですね。このため相続税対策として有効になってきます。
教育資金の一括贈与をすべきか
実は一括贈与ではなく、教育資金を必要な都度、父母や祖父母等から支払ってもらう分はこの制度を利用せずとももともと非課税です。以下は国税庁タックスアンサーNo.4405 贈与税がかからない場合の抜粋です。
2 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの
ここでいう生活費は、その人にとって通常の日常生活に必要な費用をいい、また、教育費とは、学費や教材費、文具費などをいいます。
なお、贈与税がかからない財産は、生活費や教育費として必要な都度直接これらに充てるためのものに限られます。したがって、生活費や教育費の名目で贈与を受けた場合であっても、それを預金したり株式や不動産などの買入資金に充てている場合には贈与税がかかることになります。
上記のように教育費を都度贈与する場合はもともと非課税です。
一方で、教育資金一括贈与の非課税制度を活用して一括贈与すると、資金の使用目的が教育資金のみに限定されてしまいます。
では、一括贈与せずに都度贈与すればいい、という結論になりそうですが、一括贈与のほうが良い場合があります。
曾祖父母(そうそふぼ)から曾孫(ひまご)への贈与の場合
です。
曾祖父母がひ孫に教育資金を都度贈与し続けられるのは、もちろん曾祖父母が健在の間だけです。
万が一、曾祖父母が亡くなる不幸があった場合には、曾祖父母の遺産には相続税が課されることになります。相続税が課税されない額の遺産であれば問題ありませんが、相続税が課税される場合には教育資金一括贈与を行っておけば相続税を減らすことができます。
教育資金一括贈与の非課税制度を利用する場合、前述の通り贈与後に贈与者が死亡したとしても相続税が発生しません。
ひ孫が30歳になるまで曾祖父母が健在であればよいですが、現実的にはそうもいきません。
どうやって利用するのか
三菱UFJ信託銀行を事例に見てみます。教育資金贈与信託 まごよろこぶ お手続きについてのページによくまとまっています。
税務署に行く必要はなく、贈与者(曾祖父母等)が信託銀行で口座開設手続きしてひ孫に通帳渡す
って流れみたいです。贈与者(祖父母等)と贈与を受け方(孫等)の身分証やらなんやらが必要です。
また、贈与を受けた方がお金を引き出す場合には、
- 教育資金支払いの事前に引き出す
- 教育資金支払いの事後に引き出す
の2パターンがありますがいずれにしても、信託銀行へ教育資金支払いの領収書の提出が必要です。
領収書の提出は専用のアプリを用いることで、領収書のカメラ撮影でも提出できるようです。詳細は、『まごよろこぶ領収書提出アプリ』からご覧ください。
少なくとも領収書をいちいち信託銀行へ持参または郵送する手間はなさそうです。また、年間24万円(税込)の上限はありますが1万円未満の支払いは領収書ではなく明細のみの提出でオッケーみたいです。
結婚・子育て資金の一括贈与非課税制度との違いは?
似たような制度で『直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度』っていうのがあります。
両制度の比較は国税庁のNo.4512 直系尊属から教育資金及び結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度の主な相違点によくまとまっていますので、ご覧ください。
主な違いは下記のとおりです。
教育資金の一括贈与 | 結婚・子育て資金の一括贈与 | |
上限 | 1,500万円 | 1,000万(うち、結婚に関して支払う金銭は300万円) |
用途 | 教育資金 | 結婚資金・子育て資金 |
贈与者死亡時 | 相続税なし | 相続税あり |
相続税の観点からすると、教育資金の一括贈与のほうが有利です。
以下、文部科学省の教育資金の範囲や学校等の範囲などに関するQ&A及び結婚・子育て資金の範囲などに関するQ&Aからの抜粋ですが、
教育資金とは、
(1)学校等に対して直接支払われる次のような金銭
① 入学金,授業料,入園料,保育料,施設設備費又は入学(園)試験の検定料など
② 学用品費,修学旅行費,学校給食費など学校等における教育に伴って必要な費用など
(2)学校等以外に対して直接支払われる次のような金銭で社会通念上相当と認められるもの
<イ 役務提供又は指導を行う者(学習塾や水泳教室など)に直接支払われるもの>
③ 教育(学習塾,そろばんなど)に関する役務の提供の対価や施設の使用料など
④ スポーツ(水泳,野球など)又は文化芸術に関する活動(ピアノ,絵画など)その他
教養の向上のための活動に係る指導への対価など
⑤ ③の役務提供又は④の指導で使用する物品の購入に要する金銭
<ロ イ以外(物品の販売店など)に支払われるもの>
⑥ ②に充てるための金銭であって,学校等が必要と認めたもの
⑦ 通学定期券代
⑧ 留学渡航費,学校等に入学・転入学・編入学するために必要となった転居の際の交通費
を指します。なかなか幅広いですね。保育園料や塾、水泳といった習い事の費用、通学定期券代も対象になります。一方、
結婚資金・子育て資金とは、
(1) 結婚に際して支払う次のような金銭(300万円限度)をいいます。
① 挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)
② 家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの)
(2) 妊娠、出産及び育児に要する次のような金銭をいいます。
③ 不妊治療・妊婦健診に要する費用
④ 分べん費等・産後ケアに要する費用
⑤ 子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)など
を指します。出産周りの資金から保育料、そして結婚のための挙式費用・引越し費用が対象です。子供が生まれてる前後の費用のみが対象となるイメージのようです。
両者でかぶっているのが保育料ではないでしょうか。これら2つの制度を併用することもできますが、同じ領収書を双方に提出することはできません。
結婚・子育て資金の一括贈与は、結婚資金や結婚費用を父母などに援助して貰う場合には非常に有効ですが、期間的に長い目で相続税対策と考えるのであれば、教育資金の一括贈与の方が勝っているように思います。
まとめ
結論としては、
高齢の直系親族に相続税が発生するほどの遺産がない場合には、教育資金の一括贈与の非課税制度の利用は不要
だと思います。
理由は出金手続きがめんどくさいからです。仮に500万円の教育資金一括贈与を受けたとして、その額の領収書やら明細書を20年以上いちいち提出する労力を考えると、気が遠くなります。もちろん、資金の使いみちが教育費用に限定されるというデメリットもあります。
繰り返しになりますが、国税庁ホームページだけではなく三菱UFJ信託銀行のよくある質問にもあるように、都度の教育資金の贈与は非課税です。
Q:贈与税の現行制度との違いは、何ですか。
A:現行制度においても、教育資金を「支払の都度」贈与する場合、非課税となります。本商品は、教育資金を将来分も「まとめて一括」贈与する場合にも、非課税となります。
こういう煩雑な手続きって税理士さんかなんかに頼めばやってくれるんですかね?
それはさておき、相続税の課税が発生するくらい曾祖父母または祖父母に資産がある場合には、便利な制度ではありますが、そうでない場合には必要であれば都度曾祖父母または祖父母に援助を受ければよいかと思います。
また、教育資金一括贈与を受けることができれば、学資保険や生命保険への加入は不要になると思います。そのため、
- 保険への月々の掛金の負担がなくなる
- 子供の教育費を若いうちに確保できる
というメリットがあります。父母の立場からすると領収書の手間はあるものの非常にありがたいことです。
以上のように、状況によって節税効果やさらに学資保険的な効果も見込めます。教育資金の一括贈与の非課税制度は2019年3月31日で終了してしまいますので、お子様がいらっしゃいましたらぜひ検討されてみてください。